ハンコック長老インタビュー 先祖調べの壁を克服して自分のルーツをたどった青年①

人生で誰もが一度は自分の家族がどこから来たのか、どんな先祖がいて、どんな親族と繋がっているのかと、思い巡らしたことがあるのではないでしょうか。その先祖がもし、違う文化の人たちで、自分が行ったことのないような遠い国に存在していたとしたらどうでしょう。今回は、そんな遠縁の存在と巡り会った宣教師、ヨールダン・コール・ハンコック長老へのインタビューです。

アメリカ育ちのハンコック長老(20)はユタ州に住む大学生です。アメリカ人の父と日本人の母のあいだに生まれました。本人曰く、自分は普通の学生で、友達とよく遊び、映画を見たり、ゲームをしたり、美味しい物を食べて過ごしていたそうです。十代の頃から聖書の勉強会に参加し、毎日欠かさずに祈り、寝る前には聖書を読む信仰の篤い青年です。その熱心さに加えて、友人や家族の影響もあり、いつか宣教師になりたいと願っていました。その思いを叶えるべく、2015年の10月から2017年の8月まで、日本の東北地方を拠点にモルモンの宣教師として奉仕活動をしていました。

日本に先祖の起源を持っているハンコック長老は、宣教師として来日することが決まって以来、先祖のことを気にし始め、家系図すなわち家族歴史の探求を試みました。母親から聞いた話により、また教会のオンライン系図サービスで自分の家系図を検索したことにより、先祖が「宮城県」にいるということが分かりました。ハンコック長老が奉仕活動をするまさにその地域であったことに、運命を感じずにはいられませんでした。

──ハンコック長老の先祖が、自分が奉仕する仙台伝道部の地域内にいると知ったとき、どのように感じましたか。

「わたしが日本という任地に送られた大きな理由であるように感じました。先祖がどこにいたのか、誰だったのかもよく知らなかったので、もしかしたら、親戚を見つけられるかもしれないと期待しました。彼らの記録を見つけて供養の儀式※1ができたら、と想像しました。それが実現すれば非常に特別な経験になるだろうと思い巡らし、ワクワクしてきました。」

※1 供養の儀式:ハンコック長老のように、多くのモルモンも、先祖との絆を強めるために熱心に家系図調査を行なっています。モルモン教会では家族がこの世を超えて永遠に一つに結ばれることを信じているためであり、大切な先祖の情報を探しては先祖の供養をします。その救いの儀式は、「神殿」と呼ばれる特別な建物で行われています。日本には、東京(2017年9月に改修工事のため閉館)、福岡、札幌の3カ所に神殿があります。

先祖に心を向け始めたハンコック長老でしたが、そもそも日本人の母親がいながら、なぜ日本の先祖のことをあまり知らなかったのでしょうか。

──日本の親類のことはご両親や他の人たちから聞いていませんでしたか。

「わたしの母は見た目は日本人ですが、性格はどちらかというとブラジル人です。母国語もポルトガル語ですし、母と家族はブラジル人として育ちました。そのため、先祖が日本から来たということ以外は、あまり詳しく知らなかったようです。」

ブラジルへの移住の経緯はこうでした。1929年、ハンコック長老の母方の曽祖父にあたる寒河江(さかえ)徳蔵(とくぞう)さんが、日本からブラジルのサンパウロに家族とともに移住しました。その後、寒河江家の人々が再び日本の地を踏むことはありませんでした。ハンコック長老は、ブラジルに移住した寒河江家の子孫として初めて、故郷を訪れることになったのです。

 

ハンコック長老の曽祖父寒河江徳蔵さん。ブラジルサンパウロの自宅の前で。

──宣教師になるための申請を出したとき、任地の希望がありましたか。

「わたしの兄は中央アメリカのホンジュラス、もう一人の兄はアルゼンチン、そして父はブラジルで同じように宣教師として奉仕しました。みんな中南米に送られましたが、わたしは自分が南米に行くとは思っていませんでした。むしろ、日本に行くのではないか、と感じていました。ですが、任地に関してはこだわりたくはありませんでした。どこであろうが、神様が望んでおられる場所であればどこへでも行くつもりでいたからです。それでも、日本に行くことになるのではないかな、という印象はずっとありました。任地が日本の仙台伝道部であると知ったときは、「やっぱり」と思いました。母もとても喜びました。自分の送られる場所が母方の先祖の故郷だと知ったのはその頃でした。わたしが家族の中で初めて日本に行くことになったので、みなとても興奮しました。」

モルモンの教会には、世界中に421の任地(伝道部と呼ばれる)があります。ハンコック長老は任地が決められる前から「日本」に行くと感じていたそうです。しかし、宣教師にはなすべき勤めがあります。英会話を教えたり、キリストの教えを人々に伝えながらたくさんの奉仕活動を行います。そのように忙しいスケジュールにあって、思うように親戚を探すことはできなかったようです。

──宣教師として来日している期間は、伝道活動が主で、なかなか先祖の探求をする機会はなかったようですが、この2年、先祖のことはやはり気になる存在でしたか?

「心の中でいつも気にかけていましたが、どこをどう探せばいいのかがよく分かりませんでした。わたしが宮城県仙台市の上杉に送られた時、わたしの先祖がその近くの出身だと分かりましたので、当時の伝道部会長※2だったスミス会長に相談してみました。すると、「時間があれば探してもいいですよ」と言ってくださいました。ですが、方法も分かりませんでしたし、クリスマスの時期でいろいろ忙しくて実現しませんでした。その後、違う地域に異動になり、半分あきらめていました。いつか家族と一緒にまた日本に来て探せたらいいかなと思うようになりました。正直、宣教師として日本にいる間に先祖を見つける機会はもうないだろうと思っていました。」

※2 伝道部会長:各伝道部には宣教師を指導する夫婦がいます。彼らは伝道部会長と呼ばれ、彼らも3年間、決められた任地で宣教師と同じように奉仕します。

ハンコック長老が伝道を終えるちょうど2か月ほど前、新しい伝道部会長が任地にやってきました。日本人の関口夫妻でした。伝道を間もなく終えるというときに起きた出会いが、ハンコック長老の家族歴史の探求の運命を変えることになったのです。

──関口会長夫妻が仙台に来てからのことをお話しいただけますか。

「関口会長との最初の面接がありました。どういう経緯だったか覚えていませんが、家族について話しました。

その時は、先祖のことを話そうなどとは考えていなかったのですが、自然な流れで、先祖が宮城県出身で、できれば探したいと思っていたこと、でも、彼らがどこにいるのか、どのように彼らの記録を見つけたらいいのか分からないでいる、と伝えました。

すると、関口会長は電話を取り出し、その場で東京にいる知り合いの家族歴史スペシャリストに電話をしたのです。わたしの持っていた母方の先祖の名前と、幾つかの地名や日付の情報を伝えると、『その情報があればすぐに調べられます!』との返事。それを耳にした瞬間,驚きと興奮を覚えました。

関口会長がすぐに電話してくれ、その後も先祖の探求を一緒にしてくださったおかげで家族の戸籍謄本を手に入れることができました。わたしはあまり漢字が読めないし、特に古い漢字は分からないのですが、関口会長夫妻がそれを解読してくださり、たくさんの先祖の名前を知ることができました。また関口夫妻は、古い住所を頼りにわたしの親族を探しに行ってくださって、奇跡的に彼らを見つけることができたのです。」

2017年の7月下旬に関口会長夫妻はハンコック長老の戸籍謄本の情報を元に現地を訪れ,電話帳を調べ、何度か聞き込みを重ねた結果、徳蔵さんの親戚にあたる寒河江(さかえ)孝之(たかゆき)さんと、徳蔵さんの妻ツナノさんの親族、寺島綱蔵(てらしまつなぞう)さんに行きつきました。その2日後、ハンコック長老は関口会長夫婦と一緒に、二人の親族を訪問することになりました。ハンコック長老が米国に帰国する5日前の8月14日のことでした。

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