
第80回「見上げても見上げなくても」
梅の木を指して母が言いました。
「もう半分散ってしもぅたばい(もう半分散ってしまったよ)」
見上げると、母の言う通り、庭の梅の花が 半分散ってしまっています。
「あら!いつの間に!」と驚くわたしに、「ほんなこて早かねぇ。咲いとっとは いっときだけんね(本当に早いねえ。咲いているのは少しの間だからね)」と母。
「わあ、残念!今年は満開を見損なったなあ。毎日この木の下を通ってたのに」と言うと、母は「よかよか。来年もまた咲くけん(いいよいいよ、来年もまた咲くから)」と言って、続けました。
「誰も教えんてちゃ咲くときばわかっとる(誰も教えなくても咲くときをわかってる)。人が見たっちゃ、見らんでちゃ、ちぁあんと毎年咲くけんね(人が見ても見なくても、ちゃあんと毎年咲くからね)偉かもんたい(偉いもんだわ)」
「来年はしっかり見るよ!」
「見てやらなんばい(見てあげないとね)せっかく うつくしゅ咲くとだけん(せっかく美しく咲くんだから)」
半分散った梅の木を見上げながら思いました。
置かれた場所で咲く梅の花。
わたしが見上げても見上げなくても、梅の木は今年も綺麗に花を開いて、この場所を美しくしてくれたんだよね…
「そな、行こかい(じゃ、行こうか)」
母に促され、車に乗り込みます。
今日は母とお墓まいり。
2月の晴れた穏やかな朝です。
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