信子母さんのエッセイ第75回「父の またぐら」

第75回「父の またぐら」

股座(またぐら)と言うと、股間や陰部を指す場合もあるようですが、ここで書く”またぐら” は、”両足のももの内側” のことです。

わたしがまだ父と一緒に寝ていた頃、5~6才くらいの頃だったでしょうか?
寒い寒い冬の晩、布団に横になると、父は必ずこう言いました。「のぶこちゃん、またぐらに足ば入れんかい(股座に足を入れてごらん)」

わたしは、冷えきった小さな足を、父の太ももの間に差し入れます。

父のまたぐらは本当に温かくて、キンキンに冷えた氷が溶けるように、ジンジンした足が柔らかく温まっていくのですが、まあ、その気持ちよかったこと!
「ぬっかぁ!(あったか~い!)」

そんなある晩、いつものように冷たい足を、遠慮なく父のまたぐらに入れたら、父が一瞬ビクッとしたことを覚えています。
今のようにフリースのパジャマなど着ていなかった時代です。氷のようなわたしの足は、父のまたぐらにどんなに冷たかったことでしょう。
それでも父は、わたしの小さな足が温かくなるまで、じっと我慢してくれていました。
懐かしい父の思い出のひとつです。

さて、12月も半ばになり、すっかり冬らしくなってきた熊本です。
昨晩のこと、寒い机で聖典を読んだ後ベッドに入ると、先に寝ていた夫が、わたしの冷たい足に 温かい足を重ねてきました。

「冷たいでしょ、いいよ💦」とすぐに引っ込めましたが、夫は足を伸ばして、わたしの冷えた足を引き寄せ、そのまま包んでくれました。

「いいってばぁ…」と言いつつ、じっとしているうちに、足がじんわり温かくなっていきます。

ああ、この感覚。

… 父の股ぐらの温もりを思い出して、わたしは、今はあまり使わなくなった方言を、小さく口にしてみました。

「ぬっかあ(あったか~い)♡」

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