信子母さんのエッセイ第21回「塔の下でも」

聖典の中に、警告したり、説教したり、叫んだりするために、塔の上に登った人たちの話が出てきます。

高い塔の上に立てば、注目を集め、一度に多くの人たちに聞いてもらうことができるからです。

 

以前、我が家の子どもたちがまだみんな小さかった頃、自分がとても無力に思えたことがありました。

テレビや新聞で報道されるイジメや自殺、虐待、様々なDV、残虐な事件…  ものすごいスピードで世の中が変わっていきます。こんな世界で、わたしは子どもたちを守れるのかしら… 。

でも、わたしは塔の下にいます。遠くまで声は届かず、影響力もありません。世の中の流れを止める力などわたしにはないのです。

 

「家庭は小さな天国」という言葉は教会でよく耳にするものです。

当時のわたしもそう教わりました。

今自分がいる家庭、自分の家族にこそ愛を注ぎなさいと。

え?それだけ?それだけで大丈夫なの?子どもたちを守れるの?

….

そんなことでいいの?という不安な思いと、そんなことしかできないの?というもどかしさ。

でも、現実を見れば、塔の下にいる小さなわたしには、結局それしかできないのです。

「家庭を小さな天国に」

 

大好きよ!と声に出して言う。

抱きしめる。

愛してるよ!と声に出して言う。

抱きしめる。

抱きしめる。

ぎゅうっと 抱きしめる。

 

月日が流れ、今、息子娘たちが結婚してそれぞれの家庭を持ち、愛情豊かに子育てしている姿を見ると 感慨深いです。

 

塔の上に登らなくてもできることがあります。

塔の下の小さな家の中でも、できることはあります。

 

愛された子どもたちが愛ある家庭を築き、その子どもたちがまた愛ある家庭を築き、そのまた子どもたちが愛ある家庭を築く…

そんな家庭が増えていけば、世界は少し変わるかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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