信子母さんのエッセイ第20回「手紙」

昔と比べ、手紙を書く機会は、驚くほど少なくなりました。

若くないわたしでも、最近は簡単で便利なメールとラインばかり。

文字を書くことなど滅多にありません。

そんなわたしの手紙の思い出。

ダントツ一位は、夫から届いたプロポーズの手紙です。

結婚を前提として付き合っていたわたしたちでしたが、それでもやっぱり何か形は欲しい!そんなときに届いた手紙でした。

当時流行っていた愛国駅から幸福駅までの切符を模した「幸福行きのハガキ」に記されていたものです。

「愛する信子様

私は君を幸福にするために愛国からやって来ました。これはそのための切符です。
君にだけにしか発売しません。

すぐには幸福へは行けないかもしれませんがずーっと乗っててください。

道をはずれないように運転します。 英治」

今日は、夫に、この手紙の返事を書いてみようと思います。

「愛する英治さま

1983年10月20日に東京神殿で結婚して始まった 小さな1両編成列車の旅。

幸福駅に向かって2人で出発したけれど、乗客が1人増え、2人増え…いつのまにか10人増えて、賑やかで楽しい旅になったよね。

故障したり、引き返したり止まったり、また進んだり…  全てが順調な旅ではなかったけれど、

それでも、しっかりハンドルを握りしめて、前を向いて進んでくれたあなたに 心から感謝しています。

大きくなった子どもたちは、1人降り、2人降り、3人降り…  新しい家族と共に、
今度は自分たちの列車で幸福駅に向かっています。

そのうちに、みんな降りて、またわたしたち2人だけになるでしょう。

寂しいかって? いいえ、楽しみです。

新婚の頃のようにあなたと二人でおしゃべりしながら、流れる景色を楽しみたい。

ぼくは幸福駅に ちゃんとたどり着けるかな?と昔あなたは言ったけど、

この旅全部が幸福の中にあるんだってこと、わたし途中で気づいたの。

ゆっくり進もう。急がなくてもいいよ。

あなたが好き。
運転するあなたの横顔を見ながら、ずーっと乗っているからね。信子」

 

 

 

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