信子母さんのエッセイ第132回「おたまの話」

第132回「おたまの話」

高齢者の自動車運転免許証自主返納について、最近よく耳にします。

わたしも、もうそろそろかな…と思うこともありますが、でも、母の送迎には欠かせないし、もうしばらくは運転するつもりです。

というのは建前。

本当は、運転やめたくないのです。

行きたい時に行きたい場所へわたしを連れて行ってくれる大好きな相棒を手放したくない!というのが本音かな。(๑˃̵ᴗ˂̵)💦

好きなことを取り上げられるのは寂しいものです。

今年になって、わたしは母から”台所に立つ”ことを取り上げました。

鍋の焦がし、火の消し忘れ、何よりも台所での転倒がきっかけです。

できることはなるべくさせるように、とケアマネさんから言われ、わたしもそう思ってきました。

でも、ちょっともう限界だと感じたので、ケアマネさんに相談し、母に話してみました。

「ねぇ、お母さん、高齢者になると運転やめる人多いでしょ。お母さんの知り合いにもやめた人いるよね?もう いーーーっぱい運転してきたから運転から卒業するのよ。名誉の卒業! お母さんも、そろそろ料理から卒業しない?これまでいーーーっぱい作ってきたから、あとはわたしに任せてよ!お母さんみたいに上手には作れないけど」

母は納得し「よろしくお願いします」と頭を下げました。

胸がキュッとなりました。

母の家の台所を片付けると、賞味期限が数年過ぎたものや、得体の知れない おぞましいものが次々に出てきました。

ありとあらゆるところに、割り箸、竹串、弁当箱、袋、包装紙、タッパーなどなど… とにかく何でも溜め込んでいる母の台所はカオスです。

これもいらない!これもいらない!これもいらない!…  可燃ゴミの袋も不燃ゴミの袋も、何枚あっても足りません。

そうやって、容赦なく捨てていた中で、思わず手が止まったものがありました。

おたま。… 母が愛用していたアルミ製の玉杓子です。

こんなおたまは必要ない。

綺麗なおたまを、わたしはいくつも持ってるもの。

けど…  だけど…  

このおたまは捨てられないなぁ…

手に取ると、母の料理の数々が浮かんできます。

特に、毎日欠かさず、ずっと作り続けてくれた具沢山の味噌汁。

このおたまで かき混ぜて、このおたまで注いでくれたよね。…

やっぱりこれは捨てられないや。

だから!

このおたまは “殿堂入り” といたします!

と、告げたら「あら、そがんかい(あら、そう)」と母。

母には何の思い入れもないようです。笑

でも、わたしには価値ある宝物!

キッチンのどこかに、飾る場所を考えなくちゃ! ^ ^

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