
過去に書いたエッセイや日記の中には 忘れられない一瞬が残っています。
12年前のこの日の出来事もそんな一瞬のひとつです。
七男・不動(ふどう)が、4歳頃のことでした。
ブロック遊びをしていた不動は、すぐ上の兄が通う幼稚園の運動会を見たせいでしょうか、
自分も幼稚園に行きたいと言い出しました。
しきりに幼稚園に入りたいと繰り返します。
「もうすぐ入れるよ、春になったら、ふうちゃんも、スモックを着て幼稚園だよ!楽しみだね!」
と言った後、わたしはふと考えました。
10番目の子ども、末っ子の不動が幼稚園に入ったら、いよいよわたしはひとりになるなぁ、と。
「楽しみだけど、でも、お母さんはちょっとだけ寂しいなあ」
「どうして?」
「ふうちゃんが幼稚園に入ったら、お母さんはひとりになっちゃうでしょ」
「どうして?」
「だって、ふうちゃんを幼稚園にお見送りしたら、
お母さんは、一人でおうちに帰らないと行けないからね」
「そうか…」
「寂しいなぁ」
「そうだねぇ…」
「お母さん、どうしようかなぁ」
「どうしようねぇ…」
「困ったなぁ」
「こまったねぇ…」
本当は、そこまで寂しかったわけではありません。(^ν^)
不動が眉間にしわを寄せ、こまったねぇ、と一生懸命言ってくれるのが可愛かったのです。
「困ったなあ」
「こまったねぇ…」
「困ったなあ」
「こまったねぇ….」
そんな会話を楽しんでいたら、突然不動が言いました。
「あっ!いいことおもいついた!」
何かと尋ねると、不動は晴れやかな笑顔で、
わたしが小さくなって、不動と一緒に幼稚園に入園すればいいと、提案してくれたのです。
「お母さんが?」
「うんっ!」
「幼稚園のスモック着て?」
「うんっ!」
不動の嬉しそうな顔。
お母さんが幼稚園に入るの?とまた尋ねると、不動は元気いっぱいに答えました。
「うんっ!ふうちゃんが、ちゃあんとつれていってあげるから!」
その時のことを、わたしは日記にこう書いています。
🍀傾きかかった古い家の、散らかった狭い部屋の中。
ブロック遊びの手を止めて、そう言ったふうちゃんの、とびっきりの笑顔!
幸せは ここにある。🍀
……
そして、今、
高校生になった不動の、空になったお弁当箱を洗いながら、やっぱりわたしは思うのです。
幸せは ここにある 💕
コメント
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良い子ですね不動くん。高校一年生の今も。
先日読んだ姉妹のタイムラインを思い出しました。
お母さんは「僕たちの誇り」といった5男さんと6男さんの言葉を。
きっと、不動くんも、思ってますよ。