ふたつの言語の壁を克服―モコドンピスさんインタビュー 

今回ご紹介するのは関東地区で宣教師として活動していたティモティウス・モコドンピスさんです。インドネシアのジャカルタ出身のモコドンピスさんは、インドネシア人として初めて日本に赴任する宣教師となりました。日本語を学ぶ必要があるだけではなく、英語を学ぶ必要にも迫られました。一緒に奉仕し生活する宣教師の多くはアメリカ人だったからです。インドネシアにいたときには、日本語にも英語にも全く触れたことがなかったというモコドンピスさんは、どうやって二つの言語を同時に習得したのでしょうか。

 

 ー任地が日本と聞いた時、どんな思いを抱きましたか?

 

それはもう驚きました。インドネシアのモルモン人口は、日本と比べると1/10以下です。その中から宣教師となる人は限られていますし、ほとんどが地元インドネシアに赴任します。任地を知らせる手紙を開けた時「JA…」と書いてあったので、すっかり地元「ジャカルタ(JAKARTA)」で活動するものだと思い込んでしまいました。

ですが読み進めていくと「日本(JAPAN)」としっかり明記されていたので、何度も「何かの間違いではないか…」と読み返したのを覚えています。

 

ーそれは驚かれたでしょうね。どうして宣教師として活動することを決意されたのですか?

 

わたしはモルモンの家庭に生まれました。祖父母、父母に継ぐ3世代目にあたります。ですが家族は、わたしも含め、ほとんど教会には行っていませんでした。ですからクリスチャンとしてではなく、無宗教の人と同じ生活をしていたようなものです。

そんな状態であったのに、ある時わたしの兄が「宣教師になる」と言いだし、家を離れることになりました。この決断には家族全員が驚かされました。何しろあまりにも突然のことでしたから。兄は地元インドネシアに赴任し、キリストの教えを伝えるために2年間活動しました。その姿に、わたしたち家族も少しずつ、何かが変わっていくのを感じました。

 

兄が宣教師になる前は兄弟同士、時に親を巻き込み、喧嘩ばかりしていました。自分のことばかりを考えて、相手の立場を無視することが多かったからです。ところが、自分よりも周りの人々のことを思って助けの手を差し伸べている兄の姿を見るうちに、わたしたち家族の心は変わりました。家族間での争いが減っていったのです。…無くなったとまでは言いませんが(笑)

そんな兄の影響がきっかけで、「家族の関係がよくなるのであれば、わたしも宣教師になってみよう!」と、宣教師になることを決意しました。

 

ー誰かのために自分を犠牲にしたはずなのに、自分に返ってくるものがあるということですね。実際、日本での宣教師としての活動はいかがでしたか?

 

最初はとにかく大変でした。周りの人がいったい何を話しているのか、まったく分かりませんでした。インドネシアで英語や日本語を学んだり、それらの言語に触れる機会はわたしにはありませんでした。ですから、英語も日本語もまったく分からないまま活動することになりました。

日本へ赴任する宣教師のほとんどは、日本人または英語を公用語とする国から来た人たちがほとんどです。異国から来た宣教師たちは、日本語を学ぶために英語の教材を使ったり、先輩同僚から母国語で説明をうけながら言葉を覚えていきます。ですがわたしにはインドネシア語で教えてくれる先輩もいなければ、インドネシア語で書かれた日本語教材もありませんでした。なんの助けも期待できない状態で言葉を覚えなければならなかったのは大変でした。

 

ー今こんなふうに、日本語で会話ができていることはすごいですね!その大きなチャレンジを乗り越えるために、相当な努力をされたのでしょうね。

 

努力もしましたがそれ以上に、同僚や伝道部会長*1、そしてわたしと出会い、関わりを持ってくださった方々の理解があったおかげだと思っています。宣教師は、常に同僚とペアを組んで宣教師としての活動に励みます。イエス・キリストの教えを求めている人にメッセージを伝えるためにも、日々同僚と計画し、密なコミュニケーションを取らなければなりません。

同僚たちは、きっとわたし以上に、わたしに愛をもって接することと忍耐を強いられたと思います。さらには、伝道部会長のサポートがあったおかげで、少しずつ日本語と英語を理解できるようになっていきました。

 

※1伝道部会長: 伝道部と呼ばれる任地にいる約100人あまりの宣教師の世話をする夫婦のこと。彼らも宣教師と同じように伝道活動を行うことを希望して赴任し、自費で生活しながら奉仕活動をしている。彼らの任期は3年。

 

―宣教師になったことを通して、モコドンピスさんが得られたものは何ですか?

 

1つは「言葉」です。この2年の活動を通して、2つの言葉を学ぶことができました。宣教師としての務めがなければ、そして同僚や伝道部会長の助けがなければ、決して得られなかったものです。この2つの言語を通して、わたしはインドネシアに留まっていたら知ることのできなかった様々な価値観、そして文化を知り、それに触れることができました。このことは、おそらくわたしの今後の人生にとって、大きな財産になると思います。

 

もう1つは、インドネシアにいる母と姉が再び教会に通い始めたことです。かつて兄が宣教師として奉仕をし、家族に良い関係が生まれたように、神様は不思議な方法を使って家族の心を和らげ、再び信仰の道へ導いてくださいました。二人がもう一度神様を知ることができて、こんなに嬉しいことはありません。わたしは今、宣教師になって本当によかったと思っています。

 

ー最後にこれを読んでくださっているみなさんへメッセージをお願いします。

 

わたしたち宣教師は一見、みなさんとは違う「変わった人達」に見えるかもしれません。ですが同じ人間です。悩みもありますし、いつもハッピーなわけでもありません。特に来日して日の浅い宣教師たちは、かつてのわたしがそうだったように、言葉の壁を感じ、辛い思いを持っていたりもします。是非、同じ人間として、みなさんからもわたしたちに声をかけてみてください。人種、役割は違っても「考えていることは一緒なんだ」と、きっと共感していただけると思います。

わたしは日本のみなさんが大好きになりました。日本人は、インドネシアのモルモン会員よりもずっと気性が穏やかです(笑)。これまでたくさんの人々に助けてもらいました。いつか、その感謝をお返しできたらと思います。また、必ず日本へ来て、助けが必要な人の力になりたいです。

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