オリンピック銀メダリスト:ノエル・ペース

ソチオリンピック、スケルトン選手の物語


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オリンピックは,世界が一つになって,最強,最速,最高の能力をもった選手を決定するすばらしい祭典です。これから数週間この韓国で,懸命な努力と犠牲と忍耐を重ねたオリンピックチャンピオンが誕生し,彼らの人生を変えるものとなるでしょう。

何年も前,スケルトン競技にアメリカ代表として冬期オリンピックに出場する前に,ワールドカップツアーに出場し,世界最高の選手たちと戦う機会をいただきました。そこまで到達できたことに自信をもち,将来大きな喜びを手に入れるまでの過程を楽しみにしていました。

初めてワールドカップに出場するためにドイツに到着したときに,世界一危険なコースだから気を付けるようにとほかの選手たちに言われました。

スケルトンを観ていると,ただ30kgのソリに乗って,一番速く走れるよう願いながら運に任せて走っているように見えるかもしれません。皆さんの中にもそう思っている方がいると思います。でも,トップレベルの選手は,1センチ単位で正確にソリを操縦します。肩とひざの下にある操縦かんを使ってソリの向きを変え,時速145キロ以上で滑走するときに生じる大きな圧力に負けないよう走ります。このとき,あごと氷の距離はほんの数ミリになることもあります。それぞれのコースは異なります。長さは約1600メートルですが,方向や難易度は異なります。左,右,左に曲がるものもあれば,平昌のように右,左,まっすぐ,右というコースもあります。それぞれのコースをよく研究する必要があります。

ドイツでの練習の初日,わたしは震えながらスタートラインに向かいました。このコースが危険だと言われて恐怖を感じていたからなのか,寒さのせいかは分かりません。気温は,今日の韓国の外気と同じくらいでしたが,頭のてっぺんからつまさきまでとても冷たくて薄いウェアを身につけていました。震える中,出走の順番が来たことを告げられました。チームメートが駆け寄って来て,4番,9番,10番カーブに気を付けるように,そして「クランケンワゴン」には決して乗らないようにと言いました。初めて覚えたこのドイツ語は,「救急車」という意味です。小さな町なので適切な医療処置は受けられず,動物用の救急車しかない,と告げられました。つまり,人間用の病院はないのです。胸の鼓動が速くなりました。

インターフォンから,コースに降りるようアナウンスが流れてきました。わたしはソリを下ろし,どうすればこの危険なコースを完走できるのか分からないまま走りだし,1番と2番カーブを通過しました。壁に肩を打ち付け,「こんなの聞いてないよ!」と思いながら3番コーナー,4番コーナーへと向かいました。上り,下り,上ったところのコーナーで,ひっくり返ってしまいました。絶対にゴールしようと決めていたので,しっかりつかまって5番コーナーを逆向きで通過し,見事にまたそりに乗り,6番,7番,8番コーナーを通過しました。

9番コーナーを曲がるとまたひっくり返ってしまいましたが,コーナーがなかったため,時速120キロで走りながらそりを元の向きに戻すために力を尽くしました。10番コーナーに差し掛かったとき,この危険なコーナーの操縦関するチームメイトのアドバイスを忘れてしまいました。360°回るので,自分がどこにいるのか分からなくなるのです。どうしてよいか分からなかったので,ともかくしっかりとつかまることにしました。ここまで何とか来れたのだから,最後まで行けるだろうと思いました。

この大きなカーブの重圧を体に受け,自分がどこへ向かっているかも分からないまま,数回上下を繰り返しながらコーナーを曲がり切ろうとしていました。コーナーの屋根を見上げながら「屋根にだけは衝突しませんように」と思って進んでいたのを覚えています。どうなったと思いますか。なんと,屋根に衝突し,空中に投げ出されながらもそりにしがみついていたため,非常に重いそりの下敷きになって息ができなくなりました。

スケルトンで衝突した場合,2つのことを覚えておかなければなりません。まず,ソリを自分の前に押し出すことです。後ろからソリに押されると,自分が止まってもソリは滑り続け,重傷を負う可能性があるからです。二つ目は,動きを止めないことです。そうしないと,氷がスピードスーツと皮膚を溶かし,大きなけがにつながります。

わたしはソリを自分の前に押し出しました。すぐに,氷が皮膚に当たるのを感じたのでうつぶせになり,スピードを落とそうとしました。氷が手袋やスピードスーツを溶かしていくのが分かりました。とうとう止まって,息をすることができました。氷から立ち上がると,腕から出血し,スーツは破れていました。周りの出来事がスローモーションのように見えました。救急隊員が近づいてくるのを見ながら「クレンケンワゴンは結構です」と言いました。チームメイトの助言通りに,救急車への乗車を拒否したのです。その日得た教訓は,人生に大きな影響を与えました。あの巨大なコーナーに入ろうしていたわたしは途方にくれました。目的地にたどり着く方法が分かりませんでした。屋根に衝突しないようにと願うばかりでした。自分が行きたくない屋根の方ばかりじっと見ていました。

人は自分の目の先にある場所にたどりつくものです。皆さんはどこを見ていますか。日々何を優先していますか。救い主は,小さなことから大きなことがもたらされると教えられました。目的地までわたしたちを導いてくれるのは,日々の小さな選択の数々です。思いは言葉を生み,言葉は行動を生み,行動は習慣を生み,日々の歩みの方向性が決まります。

2014年のソチオリンピックは,すばらしい経験でした。ゴールしてスタンドに飛び込んだときに,これまでの犠牲や日々の絶え間ない訓練やがんばりが報われたと思いました。でもそれ以上に,自分一人ではメダルは獲れなかったと思いました。助けと導きがなければ獲得できませんでした。メダルを獲得したとき,「みんなのおかげよ!」と言いました。

2014年のオリンピックの表彰台に立ったときに身につけていたネックレスについて,多くの人から尋ねられました。人に気づいてもらえるように,このネックレスをしていたわけではありません。何の気なしに身につけていました。日々目を向ける先を忘れないために身につけているものです。永遠という目的地に向かって歩むことを覚えておくためのものです。このたいまつは,キリストの光を分かち合い,人に仕え,自分を忘れて働くことを思い出させてくれます。オリンピックの聖火と,人々の光となることを思い出させてくれます。光となるための第一歩は,微笑みかける,隣人を訪問する,だれかのための食事を作るなどの小さなことです。たいまつは,義になかった者となり,自分の考えをはっきりと述べ,際立った人となることを思い出させてくれます。神殿の絵が刻まれた若い女性のメダルは,天父と交わした貴い聖約を思い出させてくれます。キリストを確固として信じ,完全な希望の輝きを持ち,神とすべての人を愛して力強く進むことと,常に祈り,聖文を研究し,聖文について考えることを思い出させてくれます。

わたしはモルモン書が大好きです。日々,モルモン書の光に鼓舞されています。モルモン書には,痛みをやわらげ,理解の扉を開き,平安をもたらす力があります。モルモン書はイエス・キリストの証です。地上で最も正確な書物で,わたしたちの宗教の要石です。まだモルモン書を読んでいない方は,ぜひ読んでください。すばらしい本です。オリンピック選手が目標に向かって毎日ステップを踏まなければならないように,わたしたちも信仰と行いを通して,将来受ける喜びと幸せのために日々のステップを踏むことができます。

自分が避けたい末路ではなく目標とする場所に目を向けるなら,そこに至る道は輝きを増し,重荷をより容易に負えるようになり,キリストの光を導き手とすることができるでしょう。

ドイツでのワールドカップの経験とは異なり,福音の原則に従うことにより,ゴールして天父のみもとに戻るために行うべきことを知ることができるでしょう。世の中のプレッシャーは重いかもしれませんが,福音に堅く立つことにより,自分の目標をはっきりと見据え,日々義にかなった決定を重ねることができるでしょう。人生で失敗して衝突しても,悔い改めのプロセスを通してまた完全になり,わたしたちが主を招きさえすれば,罪悪感や失望や暗闇はキリストの贖罪と光にのみこまれます。

わたしたちが目と心と思いを自分が行きたい場所に向けて,日々救い主に至る道を一歩ずつ歩めますように。救い主,イエス・キリストの尊い御名により,アーメン。


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